私の心積もりと京子ちゃん

田ノ浦の海岸について、経験したことのない映像に足がすくみどうしようもなかった時
ほっかむりを被る一人のおばちゃんに眼がいき話しかけた。
「どこの方ですか?」
私が上関町四代の田ノ浦海岸に来てはじめて口を聞いたおばちゃん。

「私?祝島。ほれ見えるじゃろ。あの島。」
指差す方向を見て驚いた。
驚いた瞬間涙がボロリと落ちた。
「近っ!!発電所はどこに立つの?」
「この海。埋め立てて。」
全部の状況が把握できて驚いて瞬間またボロリと涙が落ちた。

 

田ノ浦の海岸から祝島まで4キロメートル。

温排水が排出されても水温が上昇したということはないとあったけど
そんなのはうそだということが明らかにうそだということが明らかにわかるから
ぼろりぼろりとこぼれる。

私がおばちゃんの横にいることにした。

おばちゃんの横は楽しかった。
策の向こうのトビの人に「あの黒ずくめの人、怖そうじゃろ。でもやさしいんよ。」という。
トビのおいちゃんは笑いながら「あいつは悪いんじゃ(笑)」という。
「おばちゃん、名前は?」と聞くと
「私?私かわいらしい名前よ。『京子ちゃん』京都の京子ちゃん。」
「私もかわいいよ。『ナオミちゃん』」
そんな会話のやり取りをしていたら祝島のおばちゃん皆が
「京子ちゃん、孫?こんな大きな孫おったかね?」
「違う違う。今知り合った。」
「夜はどこで寝る?」「車。」「かぎ閉めて寝んさいよ。襲われたらいけんけ」
「そうやね。私かわいいもんね。」「ほうじゃ(笑)おばちゃんら襲われてもがっかりされる。同じ上に乗っかるならかわいいほうがええけぇ(笑)」
おばちゃんたちの話は楽しかった。
実に平和的にここにいる。そして本気で。

次の日(24日)
京子ちゃんが私を見て『ニカッ』と笑うので私は「食べる!」と手を上げた。
京子ちゃんは私にお昼のお弁当を作ってくれていた。
ほっかむりの帽子ももって。
白ご飯と野菜のかき揚げ、目の前の海で取れた白魚のてんぷら、味噌汁。

私は上関に来た。
それは決して凄いことではない。えらい事でもない。ただ時間があっただけ。
ここで沸いた感情はなるべく他人に押し売りしない。
他人の感情は他人。私の感情は私。
期待しても押し付けてもいけない。
他人と温度差を感じる瞬間はあるだろうけど、心をしっかり持つことを覚えておく。
それだけのこと。それが私の心積もり。

 


おまけ。
出発する前夜。日記に『いてもたってもいられなくなって。上関に行きます。』と書いた。
深夜。nabeからルートを知らせるメールが送られた。
相方吾一は『いけっ!』とあおる。
SAで休憩中、カリスマ美容師から一本の電話。
「直美さん、日記読みました!頑張ってください!それだけです!」といって切れた。
トイレに入り、気持ちを仕切りなおした。
『少し私が動いたことで静かに小さなスパイラルが私と私の周りで起こっている。しっかり見てこよう。』と鏡に映る自分に言い聞かせていた。
その瞬間、トイレからBGMが流れた。

『ロッキー』…。


普通、トイレからロッキーの曲は聞こえてこない…。



浜辺に立つ警備員。
黒の服の警備員(アルソック)は警備会社から来てるからなんらかのトレーニングをしているから何時間立ちっぱなしでも大丈夫。
黄色と青の服の警備員はアルバイト人員。
長時間、照り返しもある浜辺に腕を後ろで組んで立っていると…
「あ、また担がれよるよ。」と京子ちゃん。
月曜の朝の朝礼のよくみる風景のやつ。
しかも京子ちゃん、「また」て言ってたね(笑)

 担がれるバイト警備員は青い顔しながら「すいません…すいません…」と。